増員ペースを上げていく必要がある
厚生労働省が調査したところによると、2025年には約243万人、2040年には約280万人の介護人材が必要とされています。2019年の時点で約211万人の介護人材がいるため、2025年までに約32万人、2040年までに約69万人確保する必要があります。2025年までに毎年約5.3万人、2040年までに毎年約3.3万人増員すれば達成できる計算になります。しかし、直近の増員ペースは年平均3.7万人にとどまっているため、人材確保に向けた取り組みをより一層強化していかなければなりません。
介護業界の有効求人倍率は高い水準で推移しており、需要に対して供給が追い付いていない状況です。介護人材が不足している理由としてまず挙げられるのが、事業所における人手不足と給与水準の低さです。特に人手不足なのが訪問介護分野です。半数以上の事業所が人手不足を感じており、不足している理由としては「採用が困難である」という回答が最も多く、人材確保自体が難しいようです。
また、職員の離職率が他の産業と比べて高いことも問題視されています。離職理由として最も多いのは「職場の人間関係」であり、「結婚・出産・妊娠・育児」「事業所の理念や運営体制への不満」「収入の低さ」などの理由も多く挙がっています。
産業別の平均賃金を見ると、産業計は約33万円、医療業は約35万円、サービス業は約42万円であるのに対し、社会保険・社会福祉・介護事業は約25万円と、他の産業と比べて低い水準であることが分かります。また、ホームヘルパーや福祉施設介護職員などの医療福祉分野における他職種と比べても介護士の収入は低い水準にあります。介護人材を確保するためには現在の給与水準を改善しなければなりません。そこで政府は現在、介護職員処遇改善加算の見直しを行っています。
収入面だけでなく、あらゆる角度から人材確保に向けたアプローチが求められます。例えば、中高年齢者や他産業に従事する人など、介護業界未経験者でも参入しやすい環境作り、介護分野を目指す学生の育成など、多様な介護人材の参入促進が必要です。また、労働環境や処遇改善はこれからも進めていかなければなりません。資格取得支援やブランクのある人への復職支援、研修を受ける機会の増加など、キャリアパスを構築し十分な収入を得られる環境作りが必要です。女性職員が多いので、出産・育児と仕事を両立できる環境の整備も求められます。それと同時に職員の資質向上に向けた取り組みを行うことで、質の高いサービスを提供することが可能となります。
介護人材を確保するためには労働環境を整備する必要があります。ITの導入などによって現場の負担軽減や業務効率化を図ることが人材定着につながります。また、業界全体のイメージアップも求められます。
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