自治体でも様々な取り組みを行っている
介護人材の確保は業界全体の大きな課題です。各自治体も人材確保に向けた様々な取り組みを行っています。ここでは、自治体が行っている人材確保のためのユニークな取り組み事例を紹介します。
埼玉県では「介護職員モデル給与表」を公開しています。これは、職員の資格や能力に対する正当な評価を目的としており、給与に関する規定が未整備の事業所を対象にしたものです。給与や昇給のモデルケースを明確に示すことで、給与待遇の改善を目指します。このモデル給与表では大卒の初任給を16万9,500円、主任手当を月1万円、介護福祉士手当を月1万5,000円としています。事業所が給与表を明示することで昇格した場合の報酬や待遇が可視化され、職員のモチベーションアップにつながります。
神奈川県では「かながわ介護ベストセレクト」という取り組みを行っています。介護サービスの質向上や人材育成、処遇改善などに取り組み成果を上げた事業所に対し、奨励金を交付します。奨励金は100万円で、直近では130もの事業所からエントリーがありました。また、同じく人材育成や処遇改善について一定の水準を満たした事業所に対し、認証書を交付する「かながわ認証」も行っています。
群馬県は「ぐんま認定介護福祉士」という独自の認定制度を設けています。介護福祉士は国家資格ですが、さらに上級の国家資格は存在しません。そこで、評価・処遇の指標となる認定制度を導入することで、職員のモチベーションアップと人材定着を図っています。介護福祉士としての実務経験が5年以上あり、所属している事業所に3年以上勤務していることが受験資格となります。現在は600人以上の介護福祉士がこの資格を取得しており、実際に給与の引き上げや手当の追加につながったという報告も多く挙がっています。
山形県は介護業界のイメージアップを主な目的とした「介護のお仕事プロモーション事業」を展開しています。地域の学生や子ども、保護者に対して出張授業や職業体験イベントを開催し、介護業界に対する理解を深める取り組みです。対象となる事業には100万円以内の補助金が支給され、多くの事業所や教育機関がイベントを行っています。核家族化が進む日本では、高齢者と子どもが触れ合う機会はなかなかありません。地域とのつながりが希薄になっている今だからこそ、このような取り組みを行うことには大きな意味があります。高齢者との接し方や介護の魅力をより多くの人に知ってもらう機会として、全国的に注目を集めています。
介護人材を確保するためには労働環境を整備する必要があります。ITの導入などによって現場の負担軽減や業務効率化を図ることが人材定着につながります。また、業界全体のイメージアップも求められます。
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